日本人の過活動膀胱の数と男性に多い前立腺肥大症との合併
男性の尿もれは女性に比べると頻度は少ないものの、高齢者が増加しているために近年は患者さんが増えています。
男性の尿もれの原因は、主に前立腺肥大症と過活動膀胱です。
米国では約3300万人、日本では約810万人の人が過活動膀胱だと言われています。
日本の場合は40歳以上の人の約12%に当たります。
数字で見ると結構な数の方が過活動膀胱に悩んでいるのがわかります。
過活動膀胱は、膀胱の筋肉や神経が加齢とともに傷んだり弱ったりしてくることで、機能が低下して起こります。
膀胱が勝手に収縮してしまうために、突然排尿が起きてしまう状態、脳と膀胱との連携がうまく行かなくなった状態です。
男性の場合は、前立腺肥大症と過活動膀胱が合併しているケースが多く、前立腺肥大症の患者さんの50〜75%が合併しているというデータもあります。
過活動膀胱の治療に使われる薬
過活動膀胱の治療には、
抗コリン薬と
β3作動薬(ベータスリーさどうやく)
を使うのが一般的です。
前者の抗コリン剤は膀胱が収縮するのを防いで、尿もれが起きないようにします。
コハク酸ソリフェナシンのベジケアや酒石酸トルテロジンのデトルシトール、プロピベリン塩酸塩であるバップフォーなどが良く使われます。
口の渇きや便秘などの副作用が出ることがありますが、これは膀胱だけではなく唾液腺や腸にも作用するためです。
この副作用を解決するためにできたのが、2011年9月に登場したミラベグロンです。
ベタニスという商品名で発売されています。
ベタニスは膀胱のβ3アドレナリン受容体だけを選択して作用するので、口の渇きや便秘などの副作用が出にくいと言われています。
日本で開発された世界初の選択的β3作動薬です。
しかし、生殖可能な若い人へのベタニスの投与は出来るだけ避けるようにと注意書きがあります。
そこで、β3作動薬はほとんど副作用がないので、まずはこちらを使ってみるケースが多いです。
こちらは、膀胱の筋肉を緩めることによって膀胱を広げて、膀胱に尿をたくさん溜められるようにします。
過活動膀胱の治療に薬とともにしておくとよい膀胱訓練など
このように、薬剤による治療と尿意を感じても排尿を我慢して膀胱にためる尿の量を少しずつ増やしていく膀胱訓練とい治療を、2本立てで行うことが多いです。
また、アルコールやカフェインを控えること、便秘をしないようにバランスよく食事を摂ることなども大切なことです。
受診する診療科は泌尿器科がベターです。
泌尿器科の中には尿もれ外来を設けている医療機関も増えていますので、このような専門外来がある場合は、なお理想的でしょう。